遺贈できるもの・できないもの

遺贈できるもの

遺言者個人に帰属している物権、債権、その他の権利のうち、譲渡が可能な財産は、原則としてすべて遺贈することができます。

しかし、取締役が一人で、実体としては個人事業主のような会社であっても、会社の財産までは遺贈の対象とすることはできません。

また、債務は原則として遺贈することができません。

以下、遺贈の目的とされることが多いものについて、自筆証書遺言などで指定する際のかき方を見ていきましょう。

ポイントは、第三者が見ても相続財産のうち、どの財産を指しているのか、一目でわかるようにしておくことです。

不動産

土地の場合は、「所在」「地番」「地目」「地積」を、建物の場合は、「所在地」「家屋番号」「建物の種類」「構造」「床面積」を示して記載します。不動産登記事項証明書(登記簿謄本)を取得し、その通りに記載するのが最も正確です。

「平戸市田平町○○免△△番地の遺言者が居住している建物」というように、特定が可能な記載であれば有効ですが、登記簿謄本に従って書いたほうがいいでしょう。

動産

動産としては、自動車、貴金属、美術品、家具などが挙げられます。

基本的にはその動産(物)の「名称」「種類」「形状」「品質」といった特徴を具体的に記載します。

自動車の場合は、車検証を見ながら、「登録番号(ナンバー)」「種別」「車名」「形式」「車体番号」を記載します。

債権

指名債権(売主が買主に対して有する金銭債権、賃料債権など)、指図債権(手形・小切手など)、無記名債権(商品券・乗車券など)も遺贈することができます。

預貯金も債権に含まれますが、もちろん遺贈できます。預貯金の場合は「金融機関名(支店名)」「預貯金の種類(普通・当座など)」「口座番号」「預貯金額」を記載します。

株式

個人名義の株式は遺贈できます。「会社名」「株式数(または出資口数)」を記載します。

その他

個人名義で営業している商店の営業権なども、遺言者個人に帰属しているものであれば、遺贈することができます。

営業権の場合は、営業に関する不動産、商品、債権(売掛金など)など個々の財産を特定する必要があります。

知的財産権も遺贈の対象になります。知的財産権はその権利の発生の根拠となる法律の定めに基づいて特定する必要があります。

遺贈できないもの

遺言者個人に帰属していても、権利の性質や法令上の規定によって譲渡できないものは、遺贈の対象とはなりません。

一身専属的な権利

一身専属的な権利とは、遺言者個人にのみに帰属する権利のことを言い、個人の人格や才能、あるいは個人としての法的地位などと切り離せない関係にあるために、他人による権利行使を認めることができない権利義務です。

代理における本人・代理人の地位、雇用契約における使用者・被用者の地位、委任契約における委任者・受任者の地位、代替性のない債務(有名画家が絵を描く債務など)、扶養請求権者の地位、生活保護給付の受給権者の地位、公営住宅の使用権などがあります。

法令上の規定によるもの

麻薬や毒物など、法律によって所持や譲渡が禁止されているものは原則的に遺贈できません。

遺言者に帰属しているとはいえない財産

遺贈は「遺言者個人に帰属する財産」だけがその対象となります。次のような財産は、過去「遺言者個人に帰属するか」が問題となり、判例によって否定されています。つまり、遺贈できない財産です。

具体的には、死亡退職金・遺族年金、生命保険金、香典です。