遺産分割協議の進め方

遺産分割協議

遺言書がない場合で、相続人・相続財産が確定した場合は、「遺産分割協議」を行い、「遺産分割協議書」を作成します。相続人全員で話し合って、その結果を書面で残すということです。

法定相続人が複数いる場合、遺言で禁じられていなければ、相続開始後いつでも、協議をして遺産の分割をすることができます。遺産の分割とは、相続人それぞれがどの遺産を相続するか、取り分を決めることです。

ただし、遺産分割を有効なものとするためには、相続人全員の合意が必要です。その合意内容をまとめたものを「遺産分割協議書」と呼びます。

遺産分割協議はどう進める?

民法906条には、遺産分割について「遺産に属する物または権利の種類および性質、各相続人の年齢、職業、心身の状態および生活の状況その他一切を考慮して行う」としています。

また、分割の方法には、①現物分割、②共有、③換価分割、④代償分割、⑤用益権の設定があります。

民法としては、どんな財産があるかや、相続人それぞれのおかれた状況をすべてを考慮して、後々に争いにならないような分け方をしてね、と言っているわけですが、必ずしも民法の規定に沿って分割しなければならないわけではありません。

どんな内容でも、相続人全員が合意すれば有効です。法定相続分と一致する必要もありません。

例えば、先祖伝来の土地や建物を長男だけが相続し、他の兄弟姉妹は一切なにも相続しないという遺産分割協議も全員が合意すれば有効です。

どんなときに遺産分割協議書が必要になる?

相続財産に不動産が含まれる場合は、登記の名義変更に必要となるため、遺産分割協議書を作成します。

ただし、相続人が一人だけの場合や、法定相続分に従って相続する場合には必ずしも必要ではありません。

ただ、相続人が複数いて、不動産が相続財産に含まれるときは、作成が必要となるケースがほとんどです。

また、不動産が含まれない場合でも、後々の争いを避ける意味で、遺産分割協議書を作成しておくことをおすすめします。

遺産分割協議書の書き方

遺産分割の合意ができたら、その証拠として合意内容を記載した「遺産分割協議書」を作成し、相続人全員が実印を捺印し、相続人全員の印鑑登録証明書を添付します。

この「遺産分割協議書」が完成すると、相続の手続きに入ることができます。

遺産分割が現物分割で行われる場合には、財産が特定でき、取得する人が明確にわかるように記載します。

以下、具体的に記載方法を解説します。

タイトル

タイトルは「遺産分割協議書」と書きます。

被相続人の氏名・本籍等

被相続人(故人)の氏名、生年月日、死亡した日、本籍地、最後の住所を記載します。

遺産分割の成立を示す一文

相続人全員で協議し、遺産の分割について合意が成立したことを示す一文を記載します。

特に決まった形式はないですが、「令和●年●月●日、被相続人○○△△の死亡によって開始した遺産相続について、相続人全員で協議を行った結果、下記のとおりに遺産を分割することに合意した。」であるとか「被相続人○○△△の遺産については、同人の相続人全員において分割協議を行った結果、各相続人がそれぞれ次の通り遺産を分割することに合意決定した。」といった一文を挿入してください。

相続人の取得分を記載する

相続人それぞれが取得する財産を順に記載していきます。

「1.○○□□は、次の財産を取得する」と書いた後、具体的に財産が特定できるように記載します。

不動産であれば、登記事項証明書(登記簿謄本)を取得して、土地であれば、所在、地番、地目、面積等を、建物であれば、所在、家屋番号、種類、構造、床面積等を証明書の通りに記載します。

預貯金であれば、各金融機関から「残高証明書」を取得するか、通帳を確認しながら、銀行名、支店名、口座の種別、口座番号、金額を記載します。

遺産に借入金がある場合は、各金融機関から「借入金残高証明書」を取得し、遺産に有価証券が含まれる場合も、各証券会社から残高証明書を取得して記載します。

分割協議に含まれない遺産について

遺産分割協議が成立した後に、別の財産が見つかる場合もあります。

その時に備えて、次のような一文を挿入します。

「前記の通り相続人全員による遺産分割の協議が成立したので、これを証するための本書を作成し、次に各自署名押印する。なお、本協議書に記載なき遺産・債務並びに後日判明した遺産・債務は、相続人全員で別途協議して決めるものとする。」

「以上の内容で、相続人全員による遺産分割協議が成立したため、本協議書を2通作成し、署名押印のうえ、各自1通ずつ所持する。ここに記載のない財産については、○○□□が取得することで同意する。」

署名欄

最後に、遺産分割協議が成立した日と相続人全員の住所、氏名を記載し、実印を捺印します。

なお、遺産分割協議書は、パソコンで作成したもので構いません。むしろ、手書きですと誤字脱字があった場合に、受け付けてもらえない可能性があります。

また、遺産分割協議書は、相続人間で調整しながら作成しますので、書き換えが容易なパソコンの文書作成ソフトを利用した方が無難です。

各相続人の住所・氏名欄が印字してあったとしても、基本的には受け付けてもらえますが、偽造防止という観点からも、自署されることをおすすめします。戸籍・住民票に記載の通り(略字などを使わず)に、住所・氏名を楷書で記入してください。

印鑑は「実印」を押します。

遺産分割協議証明書

遺産分割協議書は、合意内容が書かれた1通の書面に、相続人全員が署名押印するという方法で作成します。

しかし、相続人全員が近くに住んでいるとか、あるいは年末年始などに実家で一堂に会する機会があるというケースは稀です。

相続人のどなたかは遠方に住んでいてなかなか帰ってこられない、というケースには、「遺産分割協議証明書」を作成します。

遺産分割協議証明書とは、「相続人1人1人が遺産分割協議が記載内容の通りにまとまり、合意したことを証明する書面」です。

記載内容は「遺産分割協議書」とよく似ていますが、署名押印欄が1人分であること、相続人1人につき1通、相続人の人数分作成するという違いがあります。

同じ書面に全員が署名押印をする必要がありませんので、相続人が遠方にいて、同時に一か所に集まることが困難な場合はこちらの方法で進めます。